第7話|53歳、国家公務員を辞めると決めた日

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53歳。
私は国家公務員として35年間働いてきた。

安定した仕事。
世間から見れば、恵まれている立場だったと思う。

それでも心は少しずつ疲れていった。
辞めるかどうか。

その答えを、私は何年も出せずにいた。

14回の引っ越しと公務員人生

空き家へ最後の引越し

これまでに経験した引っ越しは14回。

北から南へ。
地方都市から小さな田舎町へ。

段ボールを何度も開けては閉じ、
その土地の空気に合わせて生きてきた。

与えられた場所で役割を果たす。

それが国家公務員としての仕事だと、
ずっと信じていた。

けれど振り返ってみると、
一度も「ここに住みたい」と自分で決めたことはなかった。

14回の引越しで学んだ、効率的な準備についてこちらにまとめました。

少しずつ削られていった心

決定的な出来事があったわけではない。

ただ、どの職場にも必ずと言っていいほど、
責任感の薄い人がいた。
仕事を抱え込む人。
うまくかわす人。

その差は、見えないところで埋められていく。

私は抱え込む側だった。

若い頃は、
「自分が頑張ればいい」
そう思えていた。

けれど異動を重ねるたびに、
同じ構図に出会う。

またか。
ここでもか。

注意すれば角が立つ。
黙れば、自分が背負う。

なぜ私はこの状況を変えようとしないのか。

自分の選択を周りのせいにして、
戦う勇気がないだけではないか。

その繰り返しが、
長い年月の中で少しずつ心を削っていった。

ある日、ふと思った。

私は仕事に向き合っているのに、
仕事が私をすり減らしている。

その違和感は、
気づいたときにはもう無視できないものになっていた。

なぜ決断できなかったのか

それでも、
すぐに辞める決断はできなかった。
安定した生活。
老後への不安。
53歳という年齢。

そして何より、
家族の存在だった。

単身赴任中、
家事も育児も一人で担ってくれた主人。

私が働き続けられたのは、
その支えがあったからだった。

その年月を思うと、
「ここで辞めるなんて申し訳ない」
そう思ってしまった。

仲の良かった同僚と離れることも怖かった。
そしてもうひとつ。

ほとんどの人が定年まで働く中で、
なぜ自分はそれができないのか。

いつの間にか、
辞めたいと思う自分を責めるようになっていた。

ある夜、主人に打ち明けた。
「辞めたいと思っている」

静かに話を聞いたあと、
主人はこう言った。
「後悔しないか?」

その言葉は強く胸に残った。
辞めることを後悔するのか。
辞めなかったことを後悔するのか。

私は何度も自分に問い続けた。

53歳で選んだ新しい人生

先月、父が亡くなった。

闘病の末、
病には勝てなかった。
77歳だった。

あと10年は元気でいてくれると、
どこかで思っていた。

その別れは、
これからの人生との向き合い方を大きく変えた。

数年悩み続けた末に、
私はひとつの答えにたどり着いた。

辞めることよりも、
辞めなかった未来のほうが、
きっと後悔する。

少しずつ削られていった心を、
これ以上置き去りにしたくなかった。

53歳。
遅いのかもしれない。
不安もある。
迷いもある。

それでも私は、
国家公務員を辞めると決めた。

決意はした。
けれど、
すぐに辞めたわけではない。

それでも私は、
前に進むことを選んだ。

空き家購入を考えるきっかけについてはこちら。


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